愛煙家が警鐘を鳴らす!アニメから喫煙シーンを無くすべきではない
みなさん、こんばんは。
絶賛実施中の「たばこウィーク」。
本日も、昨日の「ほんとうに『タバコはオワコン』なのか?」に引き続き、タバコに関する記事を公開させていただきます。
今回のテーマは、「アニメと喫煙シーン」。
4400字というボリュームになってしまいましたが、どうか気楽に読んでいただければ嬉しいです。
こちらは、ネットエイジアによるインターネット調査で選ばれた「喫煙姿が印象的なアニメキャラクター」。
ダンディーな魅力的な”大人の男”がずらり。
より、通な喫煙者キャラをお求めの方は、こちらをどうぞ。
前置きはこの辺にしておいて。
初めに、自分の意見をハッキリと伝えたい。
断じて!
アニメから喫煙シーンは、無くすべきではない!
敢えて、「断じて!」を加え、強めに主張してみた。
感情的に訴えても意味がないので、できるだけ論理的な説明をしてみる。
「彼ら」からタバコを取り上げると?
先ほど見せた「喫煙姿が印象的なアニメキャラクター」。
1位の『ルパン三世』次元大介にとって、タバコは代名詞的アイテム。
黒のハットと同じくらい、「禁煙者・次元大介」は物足りない気がする。
では、実際にやってみよう。
次元大介からタバコを取り上げる。
それだけでは、きっと口が寂しいだろうから、代わりにチュッパチャップスを咥えさせてみる。
「どうして、次元だけなんだ!」と、次元大介ファンから文句が聞こえてきそうなので・・・
一味のリーダーにも、同じく禁煙してもらった。
幼稚な加工技術のせいか、咥えさせるものが幼稚なせいか、ダンディーな国民的キャラを辱める結果になってしまった。
まあ、これは作為的ないたずらでして。
言いたいのは、「喫煙イメージが定着しているキャラを禁煙させると、魅力が半減する」ということ!
『ルパン三世』以外にも、国民的なアニメには、必ずと言っていいほど喫煙キャラが登場する。
それも、脇役ではなく、メイン級のキャラで。
先ほどのランキングをもう一度見てもらえば納得してもらえるだろう。
タバコが悪影響を及ぼすのか?
ここからは、エビデンスと照らし合わせて見てみる。
「アニメから、喫煙シーンを減らす/なくすべき」と主張が正しいとするには、次の3つの前提を満たす必要がある。
- タバコは有害である
- 映像作品は、喫煙を助長する
- 特に、日本のアニメは喫煙を助長する
タバコは有害であるか?
今更、説明する必要もないが、改めてエビデンスを自分の目で確認するというのは大切だと思うので。
国立がん研究センターの予防研究グループが1990~2010年にかけて実施した「喫煙、飲酒と口腔・咽頭がん罹患リスクとの関係」をテーマにした大規模な研究によると、男性では、タバコを吸わないグループと比べて、タバコを吸うグループの口腔・咽頭がんの発生リスクは2.4倍。
部位でみると、下咽頭がんへの影響が特に大きく、タバコを吸うグループで約13倍、累積喫煙指数60以上のグループで約21倍、発がんリスクが増加する結果に。
これ以外にも、「タバコは害である」というエビデンスは提示できるが、主眼ではないのでこの辺にしておく。
とりあえず、第1の前提「タバコは有害である」はクリア。
映像作品は、喫煙を助長するか?
映画やアニメなどの映像作品における喫煙シーンは、喫煙を助長するのか?
2003 年にダートマウス医科大学小児科研究グループは、映画の喫煙シーンが 10 才から 14 才の子どもの喫煙開始 の主要原因となることを証明した調査データを発表した。
欧米の研究チームは、「映画の喫煙シーン視聴は、子どもの喫煙開始の44%の原因となっている」とのこと。
つまり、タバコを吸うことになる人の2人に1人が、映画で喫煙シーンを見たからということ。
この調査結果だけを見ると、「幼少期に喫煙シーンがある映像は見せるべきだはない」
「そもそも、映像作品から喫煙シーンは無くすべき」みたいに主張する人が出てきそう。
なので、もう少し新しい2010年に日本の20代喫煙者に取ったアンケート結果を。
この調査結果では、映像作品がきっかけでタバコを吸い始めた割合は8.0%に留まる。
先ほどの研究結果とはかなり差がある。
主観的な記憶に基づくアンケートより、客観的なデータに基づく実験の方が、より信頼性が高いとしても、昔ほど映像作品が与える影響力は大きくないのではないか。
それを裏付けるのが、こちらのデータ。
こちらは、非喫煙者に実施した「テレビドラマや映画の演出として喫煙シーンが出てくることを許容できるか」調査結果。
全体では、7割以上の人が許容できると回答。
年齢を重ねるほどに許容できない割合が増える(特に女性)傾向はあるものの、テレビドラマや映画の演出として喫煙シーンが出てきても問題無いと考える人が多数派であるのが実情。
実験結果とアンケート、手法・実施年・実施対象の違いはあるので、「映像作品は、喫煙を助長する」とは断言できない。
日本アニメは喫煙を助長するのか?
日本のアニメが、他の映像作品に比べて、喫煙を助長する傾向が強いとなれば一大事。
しかし残念ながら(幸運にも?)、そうしたエビデンスは確認できなかった。
これは主観的な意見になるが、喫煙率が高かった70~90年代は、『ルパン三世』などのアニメよりも、松田優作や石原裕次郎などが刑事ドラマを見て、タバコを吸うようになった人の方が多いのではないか。
やはり、リアリティという点ではアニメは実写には勝てない。
40年も前ともなると、作画力も落ちる。
中には、80~90年代に放送されたルパンを見てタバコを吸いたくなったという若者(2000年以降生まれ)もいるだろうが、それは「これから作るアニメから喫煙シーンを無くそう」という、今回の趣旨からはズレている。
もし、時代を問わずアニメには喫煙を助長するとするなら、喫煙シーンが含まれる全てをR-20指定するしかない。
しかし、喫煙シーンを含む作品すべてを20禁にしたら、『ワンピース』『NARUTO』『こち亀』など、国民的アニメのほとんどが除かれることになる。
そんな空っぽ同然のサブスクに、誰がわざわざ登録するか?
そんな暴挙は、個人消費の中核を担うエンタメ産業を縮小させることに他ならない。
ただでさえ、値上げによる個人消費の落ち込みが懸念される時に、みすみす経済を冷え込ませる政策は誰のためにもならない。
ということで、3番目の仮説「特に、日本アニメは喫煙を助長する」は、否定される。
タバコが持つ役割
ここまで、アニメが喫煙を助長しているわけではないことが分かった。
ここからは、演出的な観点から、喫煙シーンは無くすべきではないと語りたい。
タバコや喫煙シーンには、以下の演出的な役割がある。
- キャラクターを示す
- 世界観をつくる
- 心理状況を描写する
事例を引き合いに、説明していく。
キャラクターを示す
まずは、人物像を表す意味でのタバコ。
これについては、成熟度と職業の2つに分けられる。
成熟度
「タバコは渋さのシンボル」という共通認識は、消えることはないだろう。
超極端な例は、『ピンポン』のオババ。
卓球場で、子どもたちに卓球を教える老女。
年齢は定かではないが、白髪頭にタバコ姿がよく似合う。
静止画でも伝わる「熟成度」。
ペコらに遺した名言の数々。
いつまでもペコの背中に隠れてないで・・・ いい加減前に出て勝負してみたらどうなんだい!?
いいかい ペコ。確かにお前さんのぐらいの年には、無茶だの無謀は必要だ。 そいつは認める。 ただ、お前がこの世界でてっぺん目指すなら、白旗上げる勇気っての?覚えないとね。
「喫煙者のオババだから響くんだ!」とまでは言わないが、「タバコを咥えながら言うから説得力が増す」とは言えるだろう。
職業
誰が決めたか知らないが、「タバコを吸ってるイメージが強い職業」は確かに存在する。
典型的なのが、このキャラ。
『残響のテロル』に登場する柴崎。
この画像からも想像できるように、彼の職業は刑事。
「刑事は、くたびれたシャツを着てタバコを吸ってる」というイメージが定着されたのは、昭和から平成にかけて量産された刑事ドラマの影響だろうか。
半世紀以上かけて形成されたステレオタイプは、そう簡単には更新されない。
これから作られるアニメの刑事は、前時代を踏襲して「電子タバコを吸う」とかなのかな?
世界観をつくる
世界観は、アニメの最も重要な要素。
最近の「異世界転生モノ」に代表されるように、現代だけを描いて終わりという作品の方が珍しいくらい。
現代以外の世界線を登場させないと、他との差別化ができないというのが本音だろうが。
世界観をつくり出す時に、タバコは重要なアイテムの一つ。
なぜなら、19世紀以降の世界ではタバコは必ず登場するからだ。
時代に合わせて、キセルや葉巻など、様々なタバコが登場する。
近代以前の世界観を上手く作っている作品には、必ずと言っていいほどタバコが登場する。
世界大戦化を舞台にした『幼女戦記』
中世的ヨーロッパ的な雰囲気漂う『進撃の巨人』
常に最新の時代を描くだけではないアニメ。
いやむしろ、いろいろな時代を描くことがアニメの魅力。
心理描写を描写する
タバコ単体が説明するケースも多いが、映像作品で最も重要なのは「間を生み出す」ことにある。
例えば、このキャラの喫煙シーン。
セリフもなく、ただ女性キャラが煙を吐くだけ。
言葉による情報は全くないが、これを見ている人は「物思いに耽っている」「考え事をしている」「深刻な状況」だと解釈を加える。
タバコなしで、ただ見上げながらため息を吐く演出でも良いが、「良い年をした大人が思い悩んでいる」という情報が抜け落ちてしまう。
また、こちらは吐き出される煙がなければ成立しない。
また、人が変わると意味合いも変わる。
このシーンの魚住陸生は、火さえ点けていない。
「ただタバコを咥えているだけ」という行為も、「絶望」「茫然自失」「上手くいかない」という情報を伝えている。
「キャラクターの説明」「世界観の醸成」「間を作る装置」
タバコや喫煙シーンは、これらの重要な役割を担っている。
なぜ、タバコは必要なのか?
「アニメは社会悪に加担している」というエビデンスがない事実に加えて、喫煙シーンが持つ演出的な重要な意味を考えれば、「アニメから喫煙シーンを無くそう」という主張が、いかに馬鹿げていることが分かると思う。
また、リアル社会では健康的・経済的な理由からタバコを我慢していて、「2次元ぐらいは自由に楽しませてくれよ!」と考えている人は、たくさんいるしこれから増えていくだろう。
そんな人たちから、娯楽を奪うような真似は絶対にしちゃいけない!
「リアルでは吸わないけど、映像で楽しむ」
そんな”ネオ愛煙家”が、増えていくといいなと思う。
”ネオ愛煙家”におすすめの作品
だから、最近のアニメキャラでも上位に占める。
(キャラランキング)