デカダンスとは?アニメと絡めてわかりやすく紹介
『デカダンス』
監督 立川譲×NUT 制作によるオリジナルアニメ。
タイトルにある「デカダンス」とは、移動式要塞を指している。
だが調べてみると、要塞の名前にも語源があることを知った。
デカダンスとは
デカダンス でかだんす décadence フランス語
退廃主義。頽唐(たいとう)派ともいう。衰微、衰退を意味する語で、ギボン著『ローマ帝国衰亡史』(1776~88)に読まれるように、ローマ帝国が爛熟(らんじゅく)から衰退、破滅に向かう過程の病的で享楽主義的文芸の風潮をさすことば。
退廃主義?
これだから辞書は、、、
もっと寄り添った言葉で説明してくれないものかね・・・。
「退廃的」の意味は?
風紀や風潮が衰微し、既成の美徳や道徳を否定する不健全・不道徳なあり方を求める傾向。 デカダンな様子。
出典:実用日本表現辞典
以上の2つの用語解説を合わせると、
デカダンスとは、「世紀末のワルを良い感じに美しさを見出す考え」。
一旦は、これぐらいのイメージを持っておこう。
デカダンスの語源は?
語源である”decadance”には、「下降(cadance)」に「否定(de)」が合わさった言葉。
「脱却して下降する」という意味から、古代ローマ帝国が絶頂期を過ぎて堕落と衰亡に転じたことを表していた。
しかし、言葉として根付いたのは、デカダン派とも呼ばれる「19世紀に文化人の間で流行ったスタイル」。
それまでの主流は、「キリスト教が説く道徳や価値観を忠実に」が良しとされてきた。
「新古典主義」とか、「ロマン主義」とか、そういった流れが相当。
しかし、産業革命以降モノが大量生産ができるようになった。
物質的に豊かになる中で、人間の内省的な感覚を大切にしようとする声が高まった。
そうした動きは、IT化が進むほどに、キャンプや釣りがブームになっている現代とも重なる。
文学における「デカダンス」は19世紀末のフランスで勃興した象徴主義的な世紀末芸術のことを指し、耽美的で退廃的な特徴を持つ。
「百聞は一見に如かず」
堅苦しい説明よりも、具体的な作品を見てもらった方が早いかもしれない。
デカダン派(世紀末美術様式)を代表する絵画作品を2点。
上が、グスタフ・クリムト『接吻』。
下が、ギュスターヴ・モロー『出現』。
特に、クリムトの方は有名だから一度見たことある人は多いはず。
両方の作品から受ける印象は、
クセが強い!
ではないだろうか?
毛色の違う両作だが、どちらも世紀末がしっくり来る「影」を感じる。
特に、クリムトの方は金色を基調としているんだけど、男女の表情は決して明るくない。
トーンの強い色を使うことで、より影が強調される。
『デカダンス』のどこら辺が、「デカダンス(退廃的)」なのか?
では、冒頭のアニメ作品に話を戻そう。
アニメ『デカダンス』は、なぜこのタイトルが付けられたのか?
この作品のどこに、「耽美的で退廃的な美しさ」を感じるのか?
答えは、アナログにある。
具体的な例を挙げて、『デカダンス』が持つアナログ的な美しさを紹介。
移動要塞
何と言っても、デカダンス。
人類がガドル(モンスター)と戦うために作った移動要塞。
バカでかい要塞は、上層部はシステムの管理者、下層部は価値の低い人間たちの住居となっている。
ナツメたちは、最下層のオキソン(燃料)貯蔵庫に居を構える。
サビがったタンカーたちの生活空間に、退廃的な美しさを感じる。
サビだらけのこじんまりとしたシェルター。
ジブリ作品でもそうだが、過去の産物に心を奪われるのか?
それは、朽ちていくことは生の証明だから。
デジタル世界では、朽ちるという概念は存在しない。
陶器でも、建物でも、人間でも、生きるものは必ず朽ちる。
そして、人間は生命の営みを目にしたとき美しさを感じるのではないだろうか。
自然が持つ美しさ
『デカダンス』では、2つの世界観が存在する。
1つは、タンカー(ガドル※と戦う力を持たない人々)が住むデジタル世界。
もう1つは、ギア(ガドルと戦う力を持った人々)が住むアナログ世界。
(※ガドルとは、人類の敵であるモンスターたち。)
構造的には、デジタル世界が光、アナログ世界が影。
『デカダンス』とは、ゲームの世界。
ギア(プレイヤー)がガドル(モンスター)を狩り、ハンティングレベルを競う世界。
ナツメたちは、ゲーム(システム)を成立させる歯車でしかない。
タンカーたちは、ゲームに参加するプレイヤーが使う武器や燃料をせっせと作るだけの存在。
いわば、脇役的存在。
では、視聴者は光(ギア)と影(タンカー)のどちらに美しさを感じるのか?
当然、影。
晴天や夕陽が、シンプルに染みる。
なぜ、こんなありきたりな景色が美しく感じるのか?
それは、デジタル世界を見せられているから。
もっと言えば、ゲームの世界にログインさせられているから。
もし、この作品がアナログ世界だけを映していたら、こうはならない。
何十時間もスマホ漬けになってから、外を出ると空気が美味しく感じられるのに似た感覚。
バグ
『デカダンス』のメインテーマは、「世界にバグは必要か?」。
この作品におけるバグとは、システムが感知しない存在、あるいはシステムに従わない存在。
例えば、主人公のナツメは、システム上死んだことになっている。
そして、バグであるのに懸命に生きていこうとする姿に、カブラギも視聴者も心を打たれる。
「欠けている」ことを分かりやすくしているのが、ナツメの右手。
事故で右手を失ったという設定は、視覚的に「欠けている」ことを表現するため。
これを現実世界の障がい者に当てはめて「障がい者は世界のバグだ」と曲解する人もいるかもしれない。
だが、身体的にはどこも欠けていないカブラギも、システム上バグとして認定される。
つまり、この作品が言いたいのは「みんなどこか欠けている。欠けているからこそ補おうとする。そして、その補おうとする営みこそ人間が持つ美しさ。」的なことだと思う。
要は、「デカダンス」って?
最後に、今回の学びをおさらい。
- デカダンスとは、19世紀に流行った「尖った」美術様式。
- 転じて、「世紀末の独特な美しさ、及びそうした特徴を持つ作品」
美術史の一大ムーブメントをタイトルにする『デカダンス』。
さまざまな観点の美しさがある名作なので、見たことない人はこの機会に!
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