無職と1クールアニメ

「明日休みならアニメみよう」をコンセプトに1クール完結アニメを紹介。ネタバレはありません。

近年の劇場版コナン「アメコミ化」について

昨日、2022年公開の『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』を見た。公開日が4月15日なので、約1年遅れての視聴になる。興行収入は約98億円で、2022年公開の映画では4番目、劇場版コナンの中では史上1位の記録だ。2022年は下半期に強い作品が集まっていたこと、近年のコナン映画盛況もあって、100億円を伺うところまでの人気だったようだ。

と、ここまでは一般論。近年のコナン盛況の裏には、2つの要因があると考える。1つ目は、「黒幕を見れるんじゃないか」期待。テレビアニメを追っていないので何とも言えないが、劇場版の予告編では「黒ずくめ」を匂わせてくる。日本テレビ東宝にとってコナンの劇場版は毎年トータル50億円ぐらいの太い水源なので、個人的にこの「終わる終わる詐欺」はこの先5年は続くと見ている。

コナン人気を支えているもう一つの要因は、安室透。2022年の作品もそうだが、近年のコナンは安室さん押しが顕著に見られる。初期の頃は登場人物が少なかったのもあるが、ルックスと「黒ずくめ」に近い安室というキャラは、普段テレビシリーズを見ない視聴者には絶好の引きとなる。アニメキャラランキング(イケメン等)でもよく上位にランクインするなど、顔専のアニメ好き女子たちが劇場版の売上拡大に貢献しているのではないかと考察する。初期の劇場版ではよく見られた、コナンが「新一化」する機会も減った。コナンの体や「黒ずくめ」による顔バレリスクを考えると、コナンとの共闘は健全だが、年に一度ぐらい泥酔したコナン(新一)と蘭の再会を見たいものだ。

安室さんを前面に押し出した本作は、アクションスリラー。コナンや「ゼロ(安室透)」の超人的なアクションが見どころだ。推理要素はほぼないと言えるぐらいで、冒頭30分でほぼ真犯人がわかるようになっている。

今回の主役となるのは、安室透と3人の同期。その3人はすでに死んでおり、彼らのうちの一人「松田陣平」がカギを握る。彼は爆弾処理のスペシャリストで、爆弾事件の捜査中に殉死した。彼が生きた最後の7日間は、目暮警部や佐藤刑事らの「警視庁捜査一課」に所属していた。4年経ったある日、警視庁前で爆発事件が起こる。その爆発によって亡くなったロシア人は、「松田陣平」の名刺を手にしていた。事件を解くため、当時松田刑事とバディを組んでいた佐藤刑事の記憶を足がかりに、国際的爆弾魔にたどり着く。

最近の劇場版ではお決まりの、「警視庁VS警察庁(公安警察)」が展開される。フィアンセである高木刑事が国際組織に拉致された時、現場を指揮していた公安のメガネが佐藤刑事にビンタされるシーンはスカッとした。毎回思うが、佐藤刑事は体術強いなと感心する。今回も、国際テロリストを相手に銃撃戦を繰り広げたし、『探偵たちのレクイエム』などでは、誤って人質に選んだ犯人をボコボコにする。女性の警察官を描いた作品は最近増えてきたが、彼女ほど最も強く頼りになる女性警察官像を描いたキャラはいない。

クライマックスの「東京死守」は、未だかつてない大胆でスケールの大きいものだった。序盤では未完成状態だった超巨大サッカーボールが運よく起動してくれたのも、国際組織の彼女たちが思ったより頭数いたのも、猛烈な帳尻合わせを見せてくれた。「コナンの映画って、そんなもんでしょ?」と言われればその通りなのだが、ゴムで完全に堰き止められるか?という疑問が、最後まで拭いきれずにいた。

予告編は見ていないが、「劇場版では黒幕に近づく」と期待していた人は、またしても肩透かしにあったに違いない。原作者の青山さんはどう考えているのか分からないが、国民的アニメとなった作品を終わらせるのは難しい。原作、テレビアニメ、劇場版、グッズなど、年間のコナンの経済効果はざっと200億ぐらいか。特に、近年の「安室効果」は凄まじいので、辞めたくても辞められないというのが原作者やその周辺の本音ではないだろうか。