本当に「オタク」は増えたのか!?
2022に矢野研究所が発表した「オタク調査」によると、過去2年間と比較して「オタク」人口が増えている。
アニメオタク、漫画オタク、デジタルゲーム、アイドルオタクの順に多く、最もお金と時間をかけているのは「アイドルオタク」であることが分かる。
これだけ見ると、「今後オタク人口が拡大していく!?」と考えられなくもない。
今後オタクは増えていくのか?
まずは、結論から。
今後、「オタク」は減っていく。
ここで「」付きで書いたのには、理由がある。
そもそも、自分はオタクを「お金・時間・言葉を満たす人たち」と定義している。
詳しくは、こちらの記事を読んでいただきたい。
先ほどの調査では、「オタク」は、オタクを自認する、もしくは第三者からオタクであると言われたことのある(認知されている)と定義。
つまり、定義が甘い!
たくさんアニメを見るから「アニメオタク」と考えているのかもしれないし、アイドルの話ばっかりするから友達に「アイドルオタク」だと言われたのかもしれない。
この3年で「オタク」人口が増えたのは、コロナによる一過性の増加。
単に外に出れないから、サブスクでアニメや漫画を読むしかないかと考える人が増えただけ。
行動規制が解けた今、飲食店や商業施設に人が戻っている。
「遊び方」が戻ると同時に、一時的に「オタク」だった人たちは減っていく。
今後は、金も時間も言葉も使う「真正オタク」は減り、時間だけを使う「ライトオタク」が増えていくと考える。
自分はアニメブロガーなので、アニメオタクを中心に「ライトオタク」の増加、および「真正オタク」の減少について語りたいと思う。
オタクと時間
この5年で、スマホでアニメを見ることが主流になった。
上は、2015年の調査結果。
7年前は、「アニメはテレビで見る」のが多数派だった。
しかし、2021年の調査では、若い世代を中心に有料の動画配信サービスでアニメを見る方が多くなっている。
この先5年で、中高年世代でも「アニメはスマホで見る」が多数派になるだろう。
コロナを機に、スマホでアニメや漫画を見る人が増えた。
しかし、最もアニメを見る学生でさえ、半数以上が「週の半分程度も見ない」。
つまり、これまで見なかった人がちょっと見るようになっただけ。
最も多い「週に3~4日」というのは人気コンテンツの数を示している。
毎クール40~50本近くの新作が公開されるが、良くみられるのは全体のごく一部。
それらの人気作は、放送日がバラバラになっている。
月 | BLEACH 千年血戦篇 |
火 | チェンソーマン |
水 | モブサイコ 100 Ⅲ |
木 | うる星やつら |
金 | ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン |
土 | SPY×FAMILY 第2クール |
日 | ONE PIECE |
2022年秋クール放送の注目度の高いテレビアニメ。
ビッグコンテンツがぶつからないような編成となっている。
1日1本、または2日に1本、「人気作だけは押さえておこう」と考える視聴者ニーズと重なる。
言い換えるなら、テレビじゃなくても人気作も見れるようになったことで、トレンドだけは押さえておこうとする「ライトオタク」が増えた。
オタクとお金
冒頭に取り上げた調査によると、2022年の「アニメオタク」が使った金額は2020に比べて約1,000円増加している。
ざっくり、これは映画1本分が増えたと考えることができる。
先ほども書いたが、アニメは特に「コンテンツの二極化」が進んでいる。
知名度のある作品はより見られるよう、それほどな作品はより見られなくなることが顕著になっている。
例を挙げるなら、劇場版アニメ。
こちらは、2021年に公開された映画のうち、興行収入10億円をこえる邦画一覧。
32作品のうち、アニメ映画は14作品。
劇場版アニメの製作費は2~3億円、作画に力をいれたものだと5億円ほどだと言われている。
10億円を売り上げる作品は、どれも原作やアニメ化がされている人気コンテンツ。
近年の劇場版アニメの興行収入を見てみると、「超人気コンテンツが売れてる」事実が目立つ。
ランキング圏外は興行収入も公開されないのでハッキリと言えないが、認知度の低い劇場版アニメのほとんどは赤字であると予想できる。
また、人気作品ほど公開中に何度も見られる傾向が強い。
例えば、2022年公開の『ONE PIECE FILM RED』。
入場者限定特典を複数用意している。
公開開始から約2週間ペースで新しい特典が発表され、それを目当てに複数回来場させる仕掛けがある。
このようなことができるのは、資本力がなせる業。
握手権をCDに同封するなど、「規模」を利用した売り方はアニメ以外でも見られる。
結局、この3年で「アニメオタク」が使うお金が増えたのは、「人気作品によりお金を使った」ことによるもの。
知名度が全てを決めるとなれば、近い将来映画館からオリジナルアニメ映画が消えるかもしれない。
オタクと言葉
オタク言葉が生まれにくくなっている。
それは、コミュニケーションの場が掲示板からSNSに移行したことによる。
2ちゃんねるなどの掲示板では、閉じられたコミュニティが形成された。
特定の手段への帰属意識が、独特な言語を生み出すモチベーションになっていた。
しかし、開かれたSNSでは中立的な言葉が求められる。
誰にでもわかるわかりやすい言葉で伝えなければ、バズることはない。
オタクを示す「推し」は、非オタクな人でも字面から連想できる。
つまり、コミュニティが広くなればなるほど一般的な言葉が、狭くなればなるほどトガった言葉が生まれやすい。
今はSNSが覇権を握る時代。
Twitterやインスタグラムなどの開かれたコミュニケーション空間が増えるともに、「広く」共感できる言葉が求められ、「オタク言葉の平準化」はますます加速していくことが予想される。
高まる「オタク」の価値
そもそも、オタクはニッチな世界の住人がお互いを呼び合う言葉だった。
オタクの中のオタク「真正オタク」が減っていることは、むしろ本来の形だと考えることもできる。
ただ、情報社会では、オタク的な「深さ」を持った人材が求められる。
誰でもスマホで大量の情報を手に入れる中で、「広く」知ってることに価値はない。
それよりも、普通の人が見逃す情報をキャッチして、独自の価値を生産できる人は、仕事でもエンタメでも一目置かれる。
市場価値を高めたい人は、「オタク」力を磨くことも重要かもしれない。