カタルシスとは?アニメを絡めてわかりやすく紹介
庵野秀明が突きつける“現実”とは何か 『シン・ウルトラマン』に感じる虚構のカタルシス
出典:ヤフーニュース
米林監督の少女漫画的な志向性が本作にもたらしたカタルシスは、そんな箱庭的なピュアな感情の波だったのではないか。
出典:Real Sound
哲学的なテーマにした作品でよく目にする「カタルシス」。
語尾から「死」を連想してしまうのは、間違いなく自分が無知であるが所以。
だが、何となくのイメージしか理解できていない人も多いと思う。
そこで今回は、「カタルシス」という言葉をしっかり理解して、ちょっと知的レベルを上げようではないかという企画。
カタルシスとは?
まずは、辞書的な意味から。
舞台の上の出来事(特に悲劇)を見ることによってひきおこされる情緒の経験が、日ごろ心の中に鬱積(うっせき)している同種の情緒を解放し、それにより快感を得ること。浄化。
出典:Oxford Languages
お堅いな~。
と思ったので、三省堂のサイトから引用。
心の中に溜まっていた澱(おり)のような感情が解放され、気持ちが浄化されること
なるほど、分かりやすい!
ただ、文中の「澱(おり)」が気になったので調べることに。
液体中に沈んだ、かす
出典:Oxford Languages
この辺で、簡単にまとめてみる。
カタルシスとは、「モヤモヤが晴れること」。
哲学的なエッセンスが飛んでしまった気がするのだが・・・。
まあ、イメージは掴めたので今の時点では良しとしよう。
カタルシスの起源
言葉ができた経緯を知れば、すこしは重みを取り戻せるに違いない!
そこで、少し歴史のお勉強を。
彼は『詩学』という本で使ったそうだが、不親切にも「カタルシス」の明確な定義は載せなかった。
「カタルシス」の語源は古代ギリシャ用語の「kathar」だとされていて、意味は「排泄」や「浄化」。
語源を基に、本を読んだ人たちは、カタルシスを「悲劇が観客の心に怖れと憐れみを呼び起こし感情を浄化する効果」と解釈した。
それから時が経ち、かの有名なフロイトによって、「カタルシス」の意味が精神療法にまで発展した。
彼は、催眠療法と「悲惨な話を聞いて泣くこと」を掛け合わせた「ヒステリー治療法」を行った。そして、その治療で得られる反応を「カタルシス」と呼ぶことにした。
これにより、カタルシスは、「感情を爆発させることで濁りを取り除く」という、精神療法の意味を持つようになる。
「カタルシス」は、どう使う?
では、現代の日本では「カタルシス」はどのような意味で使われているのか?
noteで「カタルシス」と検索してみると、実に様々な記事がヒットする。
目を惹くタイトルから内容を想像してみる。
- 『怪談には、カタルシスを。』→「怪談という刺激物は、心の中の毒素を噴出する装置としての役割がある」的な内容が書かれているだろう。
- 『一口エッセイ:抑圧と解放のカタルシス』→「日々抑え込まれた鬱憤を解放させたいと誰もが望んでいる、ああ、カタルシスよ。」
言うまでもなく、「カタルシス」は名詞。
よく見かける「カタルシス」の用例は以下の通り。
だが、最近では「カタルシス」の意味は拡大傾向にある。
例えば、「カタルシスがない」という場合には、3つの意味が考えられる。
- 感情が揺れ動かない
- つまらない
- やりきれない
カタルシスが持つ本来の意味は、「心の中に溜まっていたモヤモヤが解放され、浄化されること」。
そこから派生して、「満足感」や「収まりのよさ」という意味も持つようになる。
投げやりに聞こえるかもしれないが、どの意味で使われているかは文脈から判断するしかない。
カタルシス×アニメ
ここまで、国語的と歴史のお勉強で頭が疲れた。
最後は、最も身近な存在であるアニメで「カタルシス」の理解を深めていきたい。
アニメ評価サイト「あにこれ」では、「カタルシスアニメランキング」なるものが存在する。
『時をかける少女』『涼宮ハルヒの憂鬱第2期』『CANNAN カナン』がTOP3。
どうやら、アニメファンは「カタルシスアニメ」を、「感情の起伏が激しい系の作品」だと考えていることが伺える。
では、1位の『時をかける少女』では、どこら辺に「カタルシス」を感じるのか?
この作品の展開は、ざっと以下の通り。
- いつもの3人で楽しい高校生活
- 進路希望を尋ねられる
- ある日、タイムリープの能力を手にする
- タイムリープの使いまくって青春謳歌
- チアキに告白される
- タイムリープで告白展開を回避する
- チアキが他の女子と付き合い始める
- コウスケも女子と付き合い始める
- チアキから「タイムリープしてるだろう?」と聞かれる
- タイムリープを使い切る
- コウスケたちを助けようとするが何もできない
- チアキがコウスケたちを助ける
『時をかける少女』は、主人公・マコト視点で描かれる。
当然、観客はマコトに感情移入し、この作品で感じるカタルシスとはマコトが抱えるモヤモヤと浄化。
この作品には、少なくともカタルシスを感じるポイントが4つある。
- 青春はずっと続かないかもしれない(進路希望調査)→今日をやり直せばいい(タイムリープの獲得)
- 今の関係性が続かないかもしれない(チアキからの告白)→告白される前に戻る(タイムリープの行使)
- コウスケたちを助けられない(能力消滅)→二人は無事(チアキのタイムリープ能力発動)
- チアキへのモヤモヤ(避け続けた過去)→想いを伝えあう(チアキとの約束)
見る人によって感じるカタルシスには、違いがある。
マコトらと同じ10代が見れば、マコトとチアキの恋愛について、20代~30代は「青春時代に戻りたい」という現実についてカタルシスを感じるだろう。
見る人やタイミングによって、感じることが違う。
『時をかける少女』が名作であると言われる所以は、ここにあるのではないか?
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つまり、「カタルシス」とは?
最後に、今回の学びをまとめる。