無職と1クールアニメ

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金森さやかのビジネス論は、現実世界でも通用するのか?

映像研には手を出すな!:第10話「独自世界の対立!」 金森が声優オーディションを企画 教師に目をつけられ… - MANTANWEB(まんたんウェブ)

海外からも高い評価を得る『映像研には手を出すな!

見どころは、創造の醍醐味というメインテーマと高い映像クオリティ。

でも、個人的に一番印象に残ったのは、金森さやかというキャラクター。

 

みどりもツバメも「良いモノを作る」ことだけに真っすぐな生粋のクリエイター。

しかし、良いモノを作っても見てもらえなければ意味がない。

金森氏は作り手の2人のマネジメントだけでなく、売れるための環境づくり、プロモーションまでこなす。

ある意味で、「良いモノを作ろうとする」2人とは対極にいる人物。

彼女の言動からは「売る」というビジネスでは欠かせない要素を学ぶことができ、「作ること」よりも「売ること」に興味がある自分はそれを最大の見どころに映った。


だが、ここで1つの疑問が浮かび上がる。


現実世界で、金森氏のビジネス論は通用するのか

 

今回はそれを検証すべく、金森氏の以下の3つのセリフを取り上げる。

「誰も知らねえ店に、客が来るわきゃないんだ。店や商品の充実だけにこだわっても意味がない。」

 

「こだわりだけじゃなく、客の購買意欲をかきたてる内容を考えろ!」

 

「我々には大手スタジオのようなブランド力もないので、派手な受けの良いジャンルで勝負しないと金になりませんよ。」

 

①ジャンル選択

金森氏のセリフ

我々には大手スタジオのようなブランド力もないので、派手な受けの良いジャンルで勝負しないと金になりませんよ。


作中での意味

第2話・映像研の初めての会議でのセリフ。

クリエイターの2人のペースに乗ると、作りたいモノを作りかねない。あくまで「見てもらう・売れる」モノを作るんだよということを伝えるために真っ先に議題に挙げたと推察。

検証事例

売れる・大衆が見たいものを作って成功しているのが、細田守。正確に言えば、日テレ。

完全オリジナル作品の開拓者”細田守が描いてきたもの - 映画ナタリー

新作が公開されるたび興行成績を塗り替えていき、「ポストジブリ」にふさわしい一大経済効果をもたらしている。

 

ここからは作品批判が大いに含む。

売れるようにはなったが、面白くなくなったという意見も少なくない。自分もその1人。

個人的には、2012年の『おおかみこどもの雨と雪』から売れるジャンル選択が始まったと考える。

それまでの『時をかける少女』『サマーウォーズ』では、監督自身が作りたいものを作っている感じがするのだが、それ以降の作品では「こんな展開だったら感動するでしょ?」のような商業的な成功を意識した作品作りを感じる。

 

だが、それは日テレや社会全体の期待がそうさせていると思うので、監督1人を批判することはできない。

 

映像研には手を出すな!』の金森氏も、ジャンル選択こそが最重要であると考えていると分かるのが、先に挙げた最初の映像研会議でのセリフ。

まだ関係性のできていない創部間もなくのタイミングで真っ先に議題に挙げた。

その場では、2人の力量を図ることを優先させジャンルを確定させなかったが、「客が求めているのはどんな作品かを考えろ」というメッセージを2人のクリエイーターに届けることには成功していると考察。

②認知活動

金森氏のセリフ

誰も知らねえ店に、客が来るわきゃないんだ。店や商品の充実だけにこだわっても意味がない。

作中での意味

第9話・幼少期に親戚が経営する雑貨屋が廃業した回想後のセリフ。

商品のラインナップにこだっていたものの、アクセスが悪く潰れてしまったあの雑貨屋の失敗から「何を売るか」以前に、「どこに客が来てもらえるか」を考える必要性を説く。

検証事例

消費行動としては、AIDMAの法則が有名。
ある消費者が商品やサービスを利用しようと決めるまでの間に経る以下の頭文字を取ったもの。
AIDMAとは、Attention(注意)、 Interest(興味)、 Desire(欲求)、 Memory(記憶)、 Action(行動)

中でも、認知は"Attention"に当たる。

認知プロセスにおいて、成功を収めたのが『カメラを止めるな』

映画『カメラを止めるな!』公式サイト
初めはたった2館から上映が始まった同作。

ローカル映画の認知度向上のカギは、口コミの力。

見た人のほとんどがSNSで口コミを書き、少しずつ拡散される。

そして、要所要所でのインフルエンサーが発信。

当時、AKB48の人気メンバーだった指原莉乃は、インスタで200万人以上のフォロワーに届ける。

自分もこの作品を知ったのは、インスタでトレンド入りしているというネットニュースを見たのがきっかけ。

 

もちろん、認知され見たい人が増えても見れる劇場が2館では興行的な成功は収められない。

ソフト的な広がりの少し前に、上映を100館に拡充させたのがビジネス的な成功要因。

 

映像研には手を出すな!』内でも金森氏は、SNSを駆使して宣伝活動を行う。

SNSユーザーの行動経路を理解し、ユーザーの購買意欲をそそる出口設計・投稿・導線確保のテクニックは、まさに企業のSNS活動のお手本ともなるようなレベル。

③購買意欲

こだわりだけじゃなく、客の購買意欲をかきたてる内容を考えろ!

作中での意味

第9話・親戚の雑貨屋が潰れた回想後のセリフ。

商品のラインナップにこだっていたものの、アクセスが悪く潰れてしまったあの雑貨屋の失敗から「良い作品を作る」だけじゃなく、「客が見たいものを作る」必要性を説く。

検証事例

映像で楽しませるだけでなく、その後の物販事業で大成功を収めたのが『妖怪ウォッチ』。

妖怪ウォッチ! テレビ東京アニメ公式
妖怪メダルを始め、作品を見たことがない人も買い求めるほどの社会現象を起こした。

全盛期の2015年の関連商品の売上高は、500億円を誇った。

廃るのも尋常じゃないスピードだったが、映像を超えて購買意欲を掻き立てた作品は他にない。

 

映像研には手を出すな!』の金森氏も映像を超えた物販で成功を収める。

文化祭での上映後、物販スペースを設けDVDの予約を受け付けた。

また、即時予約特典としてツバメのサイン入りボードを用意する辺り、本当に抜け目がない。

結果、用意していたDVDは予約でソールドアウト。まさに、客の購買意欲を書きたてる仕掛けのなせる業。

結論

金森氏のビジネス論は、現実世界でも通じる

今回取り上げたセリフ以外にも、先行投資の重要性を示す行動や経済の本質を表すセリフを残している。

映像制作を目指すクリエイターだけなく、『映像研には手を出すな!』は経済学を学ぶ人にとっても教科書となる。

純粋に作品を楽しむというもの良いが、たまには「売れる/売れない」という文脈でアニメを楽しんでみても良いかもしれない。

海外の反応』映像研には手を出すな! 第9話「ちび森氏有能。金森氏がさらに好きになった!」 | eigotoka 〜海外スレ翻訳所〜

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(2022年9月22日時点)

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参考サイト

https://www.youtube.com/watch?v=wkLRVDhRFBE
https://static.tokyo-np.co.jp/image/article/size1/4/1/1/e/411e632dc09e7d811e283f7dd6f8f4aa_3.jpg
https://www.advertimes.com/20180926/article277510/2/
https://www.famitsu.com/news/202108/27231850.html