無職と1クールアニメ

「明日休みならアニメみよう」をコンセプトに1クール完結アニメを紹介。ネタバレはありません。

【2022秋】人気作ひしめく中でも『チェンソーマン』が一味違う理由

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幕を開けた2022年秋!

アニメブログを運営し始めて、1年を4クールを意識するようになった。

2022秋クールで最も注目しているのが、『チェンソーマン』

漫画は読めない「アニ専」な僕でさえ、原作の相当な人気ぶりを繰り返し耳にしてきた。

だが、ビジュアルやあらすじなどの事前情報は入れてこなかった。

いつかアニメ化されると信じて。

そして、遂に訪れたその時。

どれくらい原作に忠実なのかは分からない。

だが、期待を超える満足度。

OPから堪能できる神がかった作画。

音楽やセリフも一級で、原作至上主義者たちも一様にうなずいているに違いない!

 

テンション上がったので、ネットでいろいろ調べてうちに、この完成度にはカラクリがあることを知る。

それはアニメ制作の仕組みに関わることで、それまで意識してこなかったトピック。

どうやら、これまでの「アニメの完成度は制作会社の腕次第」という考えは改めなければいけないかもしれない。

誰が金を出すのか?

当然ながら、お金がないとアニメは作れない。

現行では、テレビ局や広告代理店などがお金を出す「製作委員会方式」が主流。

OPやEDの最後に表示される「●●制作委員会」というものだ。

アニメに無知な以前は、この制作委員会を制作会社だと勘違いしていた。

学園モノだと何となく可愛らしくさえ感じられるが、実態はお金を出す「おじさま方」を指している。

委員会という言葉が示すように、多くの場合複数人(社)で構成される。

放送局、広告代理店、出版社、おもちゃメーカー、商社などが、よく登場する。

つまり、この方式をとる目的は、リスク分散。

もし、作品が大滑り(売れなかった)場合、独りでお金を出すと大損してしまう。

1クール放送のテレビアニメでも、億単位の出資が必要になるので、出来るだけリスクを小さくしたいと考える。

出資者が増えると、当たった(売れた)場合の分け前も減ってしまうが、ビジネス的にはリスクを避けることを最優先するため単独での出資というケースはほぼない。

また、人気原作のアニメ化となると、積極的にお金を出したがる。

始まる前から既存ファンがいるから、儲かる確率も高いと考えるからだ。

作り手から見た制作委員会方式

ここまでは、お金を出す側の話。

お金を出す側からすると、リスクを抑えて投資ができる「制作委員会方式」は良いシステムに思える。

だが、実際にアニメを作る制作会社からは「制作委員会方式こそ、業界の闇を生んでいる」という声が上がる。

制作委員会方式では、金主(お金を出す側)が強い。

「俺らが金を出しているから、お前たちはアニメを作れる。だから、俺たちの言う通りにアニメを作れ」という感じ。

だから、「本当はこういう風に作りたいけど、委員会が言うから・・・」と強引な改変を迫られる場合もある。いわゆる「改変失敗」と呼ばれるもの。

ただアニメを楽しんでいる人たちからすると、「アニメのクオリティが低い=制作会社の罪」と決めつけるが、そうとは限らない。

また、政策委員会方式をとると制作会社に十分なお金が降りていかないという状況を作る。

上の図が分かるように、下に行くほどお金のパイは減っていく。

上流の金主(スポンサー、制作委員会等)が独占して、最下流の下請け制作会社には微々たる製作費しか残らない。

途中で作画が突然劣悪になる、いわゆる「作画崩壊」が発生するのは、こうした逆ピラミッド型のシステムに起因している。

制作委員会方式をやめれば良くね?

「食い物にされるなら、制作委員会方式から脱却すればいいのに」

まともな人なら、こういう発想に至る。

実際、これまでの方式から脱却している会社もある。

宮崎駿たちのスタジオジブリ庵野秀明のカラーなどは、自分たちでお金を出してアニメを作っている。

だが、全ての制作会社がこういうスタイルを取れるわけではない。

一般的に、アニメ制作には1話(30分)1,000万円、1クール(12話)作るには約1億2000千万円がかかると言われている。

作画にこだわろうと思うと、1クール放送分でも約2億円が必要になる。

来月のスタッフの給料を確保するので精一杯な中小規模のアニメ制作会社が、ポンと2億円用意できるだろうか?

しかも、作った作品が売れるかどうか分からない。

到底そんなことできない。

だから、薄利でも(赤字でも)、上から命じられた通りに「低コストで、それなりのアニメを作ろう」というところに落ち着く。

 

とは言え、名前が売れ、経営体力のある大手の制作会社が、単独での制作に乗り出す制作会社も出てきている。

2022年秋クール最大の話題作『チェンソーマン』。

こちらは、MAPPAが100%出資の作品。

クレジットにも、「制作委員会」の文言は見当たらない。

進撃の巨人』『この世界の片隅に』『ドロヘドロ』を作ってきたMAPPA

認知度、クオリティともに、超一流の大手制作会社とは言え、100%出資がいかに大勝負であるかは、下のインタビュー記事を読んでみてほしい。

realsound.jp

これまでのように、「もの言う金主」制作委員会がいないだけに、放送コードなどを意識する必要がない。

既に公開された第1話を見ても、グロ描写は相当なものだった。

既存の制約から解放されたMAPPAが作った『チェンソーマン』に目が離せない!

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「作りたいものを作りたいように作る」ために

ここまで、「制作委員会が全ての元凶」みたいなことを書いてきた。

金主だけが儲かる仕組みになっていると分かっていながらも、半世紀以上続いてきたこの方式がすぐに刷新されることはない。

それは、建設業界や小売業界など、「重層下請け構造」を取る全ての業界にも当てはまる。

だが、アニメ業界はBtoCビジネス。

根強いファンからお金を集め、制作にこぎつけることも出来る。

『劇場版 イヴの時間』は、海外のクラウドファンディングサイト”Kickstarter”で2000万円を集め英語版Blu-rayの制作にこぎつけた。

animeanime.jp

「作りたいものを、作りたいように、アニメが作れる」世界が実現することを願いながら、正規の方法でアニメを楽しんでいきたい。