アバンギャルドとは?アニメと絡めてわかりやすく紹介
ドイツに本社を置く世界的な文具メーカー「ステッドラー社」の看板商品。
振り子式の多機能ペン。機能は油性ボールペンの黒・赤・青、シャープペンシルの0.5 mmの4色。スタイリッシュかつシンプルなデザインで、ビジネスシーンにもマッチする多機能ペン。
見た目の雰囲気からはやや重厚的な印象を受けるが、手にすると硬質アルミ軽合金製なので18gと軽く、持ちやすく疲れにくいうえに胸ポケットに入れた時にも衣類への負担が軽減される。ビジネスマンへの贈り物としても人気の多色ボールペンのトップランナー。
すいません、ちゃんとします。
今回は、映画評論家などが好んで使う「アバンギャルド」のお話。
『ユージュアル・サスペクツ』で演じたアバンギャルドなならず者とはうって変わってこういった役も演じ切れるデル・トロに役者の懐の深さを感じずにはいられなかった。
実際この「清須会議」などは、日本人に大人気の戦国武将ものでありながら合戦シーンはなし、それどころかカリカチュアされた有名武将たちがコントのような掛け合いを繰り広げる場面まであるなど、相当アバンギャルドな時代劇である。
出典:超映画批評 「清須会議」
何やらインテリっぽさの漂う高尚な響き。
一方で、ルーズソックスを履いたJKが一瞬ちらつくのは、「ギャル」を含んでいるせいか?
そこで今回は、アニメとともに「アバンギャルド」について理解してみようと思う。
アバンギャルドとは
まずは、辞書的な定義から。
アバン-ギャルド
〘名〙 (avant-garde 軍隊用語で「前衛」の意)
① 第一次世界大戦頃から、フランスなどで起こった芸術運動。既成の芸術観念や形式を否定し、革新的芸術をつくり出そうとした。立体派、未来派、抽象画派、超現実派などの総称。前衛派。
② 芸術の世界で先端的な活動をする人。前衛。
ここから分かること。
- フランス語
- 元は軍事用語として使われていた
- 元の意味は「前衛」
- 1900年に入ってからは、当時起こった芸術運動を指すように。
- 芸術運動を起こした人たちの目的は、「芸術のあり方を一変すること」
- 今は、攻めた芸術活動を行う人を呼ぶ。
若者言葉的にまとめると、
アバンギャルドとは、攻めた芸術家や芸術作品を言う。
アバンギャルドが生まれた背景
これで終わると、約100年に命を賭けて立ち上がった人たちには申し訳ない気もするので、負担のない程度に歴史についても勉強しよう。
軍事用語として使われていた言葉を、初めて政治的なニュアンスを持たせて使ったのが、アンリ・ド・サン=シモン。
「テクノクラシー(科学主義的専制支配)の父」と呼ばれる彼は、社会で最も大切なのは富の生産と言いだした。資本主義においては、それまで「働かないでデカイ顔をしてきた」貴族や僧侶よりも、商人や一般市民の方が大切にされるべきだと。
つまり、「『王族→貴族→市民』とした階級社会はクソ」だと言った。
また同時期に、「ロシアン・アバンギャルド」と呼ばれる芸術革命が起こった。
美術ではミハイル・ラリオーノフやナタリア・ゴンチャロワ、文学ではウラジーミル・マヤコフスキーやヴェリミール・フレーブニコフなどがその代表とされる。
恐らく超有名人なんだろうけど、初めましての人たちばっかり。申し訳ないけど、、、
こんな時は、百聞は一見に如かず!
2つの作品を見てわかるように、かなり攻めてる。インテリな人は、これを「ゼンエイテキ」と言うのだろうか?
何をもって、「攻めてる」と言うのか?
19世紀までは「芸術と言えば、写実主義」だった。
写実主義とは、「ありのままを形にしようよ」という考え。
代表的なのが、下の2つ。
上が、オーギュスト・ロダン『考える人』。
下が、ギュスターヴ・クールベ『石割人夫』。
さっきの「攻めた」作品と比べて、「ありのまま」。
つまり、アバンギャルドとは「思いのままに表現しようや」という価値観であると言える。
アバンギャルド×アニメ作品
歴史の「お勉強」をしていたら、頭が痛くなってきたので、身近なアニメに移ろうと思う。
と思ったのだが、「アバンギャルド アニメ」と調べても想定したような結果は得られない。いわゆる「アバンギャルドアニメ」と呼ばれる作品たちが出てくると思ったのだが、、、
対して、「アバンギャルド 映画」の検索結果がこちら。
つまり、映画では「アバンギャルド」がジャンルとして確立しているが、アニメではそうではない。
アニメにおける「アバンギャルド」は、形容詞的な用法にとどまる。
どうやら、「演出」とセットで使われることが多いらしい。
出典:Real Sound
『輪るピングドラム』の、どの辺が「アバンギャルド」なのか?
先ほど「アバンギャルドな演出」と言及があった『輪るピングドラム』。
『少女革命ウテナ』を手掛けた幾原邦彦が「家族」をテーマに監督・脚本を担当するオリジナル・アニメ作品。
当ブログ「無職と1クールアニメ」と反する2クール作品だが、この際目をつぶってほしい。
あくまで主観的な判断になるが、作中で見られる「アバンギャルド」な演出例を取り上げてみる。
駅にある装置
作中では、駅にある装置を使った演出が一貫している。
- 駅名が書かれたサイネージ(看板)→主要キャラたちの移動
- 自動改札機→「生存戦略」の開始を暗示
- 発車標→前回までの回想内容を記述
舞台装置を用いる理由が、上記で正しいかどうかは分からない。
だが、一貫して「交通機関にしかない装置」を用いる演出は、他の作品には見られない「攻めた」ものである、つまり「アバンギャルド」であると言うことは間違いない。
電車の中と外
作中のモブキャラ(名前のないキャラ)たちの描かれ方も、かなり「攻めてる」。
電車の中では顔のある人間として、街中ではピクトグラム(絵文字)として描かれる。
この演出にこそ、作品で伝えたいテーマが隠されていると考察する。
この作品には、2つのキャッチコピーがある。
「きっと何者にもなれないお前たちに告げる」と「僕の愛も、君の罰も、すべて分け合うんだ」。
1つ目の「何者にもなれないお前たち」こそが、ピクトグラムで表象される者たち。そして、それはこの作品を黙って見るだけの「視聴者」を指していると考える。
無関心を決め込む一般大衆は、2つ目の「愛と罪を分け合う」枠の外にいる。
つまり、特定の人たち(高倉兄弟たち)にとって重要だと考えている「愛」や「罪」は、その他大勢にとってはどうでもいいこと。
要は、「アバンギャルド」って何?
話があちこち行ったので、最後にまとめます。
アバンギャルドとは、「攻めた」クリエイターや作品を言う。
映画では「アバンギャルド作品/アバンギャルド映画」と使われるが、アニメでは「アバンギャルドな演出」と使うのが良さそう。
「アバンギャルドな演出」とは、他の作品では見られない「奇抜さ」に加えて、意味のある(意味ありげな)「深さ」があるものを言う。
以上を踏まえて、「アバンギャルド」を使ってみては?
今回紹介した作品
『少女革命ウテナ』の幾原邦彦が監督・脚本を担当するオリジナル・アニメ作品。
2011年にテレビアニメが放送、2022年に劇場版(前後編2作)が公開された。
キャッチコピーは「きっと何者にもなれないお前たちに告げる」、「僕の愛も、君の罰も、すべて分け合うんだ」。
「何者にもなれない」には、「生存戦略」や「デスティニー(運命)」とともに作中キャラクター達によって度々言及されている。