アニメで学ぶ時事問題「社訓唱和=ブラック企業」なのか?
異世界を舞台にブラック企業をテーマにしたアニメ『迷宮ブラックカンパニー』では、数々の洗脳シーンが登場する。
- 「ありがとうございます」が連呼されるスピーカー
- 魔導士によるサイコキネシス
- 幹部によるありがたい講和
それに出来上がる「どこに出しても恥ずかしくない社畜」。
あれ?
1年前でも同じようなことをしていたな。
- 毎朝、全員と握手を交わす
- 朝礼での社是唱和
- 半期に一度の創業者講和
ブラックだという自覚はなかったが、確かに洗脳らしきイベントはあった。
社訓(社是)を唱える会社どれくらいあるのか?
実際、どれくらいの会社で社訓(社是)を唱和しているのだろうか?
2020年に「マネジー」が実施した朝礼に関するアンケートでは、朝礼を実施している会社の約2割が社訓を唱和していると回答。
1年前まで毎朝読み上げていた自分が言うのも変だけど、未だに社訓を読み上げている会社が結構いることに驚き。
ただ、流石にこれから新たに経営理念を唱和しようと考える会社はほとんどいない。
ただ、企業理念が根付いていないことに危機感を覚える企業も多いようで、INOUZTimesが実施したアンケートによると、半数以上が企業理念をほとんど覚えていない現状。
以下は、暗記していると答えた人の回答。
- 毎朝朝礼の時に全社員で企業理念を斉唱しているので、嫌でも覚えているから。(女性、29歳)
- 毎朝、朝礼中に全社員が大声で言うのでいつの間にか自然と暗記しました。(男性、27歳)
これだけ見ると、「企業理念を100%浸透させようと思ったら、毎朝唱えさせるのが有効」という結論になりそう。
ただ、社訓唱和なんて古臭い文化を作ろう/再開させようとすれば、時代遅れだと思われる・・・。
そんな板挟みになってる経営者が多いのが現状ではないか。
企業理念って必要?
そもそも、企業理念は必要なのか?
「企業理念 必要性」と検索すると、以下のようなことが書かれている。
- 価値観や判断基準が明確になる
- 社員の一体感を醸成できる
- 社外からの信頼を得る
当然ながら、全ては経営陣や管理側のメリット。
いずれも、従業員のために作られているものではない。
ただ、働く会社を選ぶときに、経営理念や社訓がなかったらどうだろう?
就職活動とは、いわば買い物。
就活者と企業がお互いの買い手・売り手となって選別を行う。
お互い良い商品を選びたい。
そのためには、他と比較できる情報が欲しい。
就活者が買い手の場合、
- 収入
- 福利厚生
- 離職率
これらの定量的な情報しかなかったら、どうだろうか?
給料や休みの数が同じような会社は、星の数ほどある。
では、他にどんな情報が必要か?
数字で表せない感情に関する情報。
そう、企業理念もその一つ。
- どんな思いで仕事をしているのか?
- 何を大切にしてビジネスをしているのか?
- 働く人たちはどんな共通した考えを持っているのか?
とは言え、企業理念がなくても経営はできる。
実際、経営理念などを持たない、個人でやっている商店や家族経営の中小企業はたくさんある。
そうした企業は、「お客さん=消費者」に選ばれればOKというケースが多い。
だが、会社を大きくしようと思ったら人を集めないといけない。
つまり、就活者に良い会社だと思ってもらわなければいけない。
給料や休日数だけでは、他の会社と差別化が図れない。
となると、経営理念などの感情的な情報が必要になってくる。
洗脳の究極が戦争
何となく、前段では企業理念の必要性について語った。
話を、ブラック企業に戻そう。
ブラック企業は、いわば「洗脳を駆使した集団」であると考えることができる。
なぜ、洗脳が必要なのか?
誰が、誰を、洗脳するのか?
経営陣が、従業員を、洗脳する。
目的は?
安く長く働いてもらいたいから。
つまり、洗脳レベルが高いほど、従業員は長時間労働や人格否定も許容するようになる。
洗脳を駆使した究極形が、戦時中の国家。
太平洋戦争中の日本を例にとると、
- 天皇の神格化
- ラジオ、新聞による刷り込み
- 叩き込み教育
それで出来上がったのが、「死を顧みない兵士たち」と「それを良しとする国民」。
つまり、ブラック企業に見られる社訓唱和は、戦時中のラジオ放送だと置き換えることができる。
これだけ聞くと、「社訓を読み上げる会社=ブラック企業」に聞こえるかもしれないが違う。
理念や価値観の統一は、集団を形成するうえで必須。
個人的には、世の中の全ては洗脳だと思ってる。
「殺人をしてはいけない」や「自分は男性」というのも、法律や社会による洗脳。
つまり、社会という集団でやっていく以上、共通した考えは必要ってこと。
「情弱」を脱するしかない
会社が集団である以上、価値観や考えを統一して管理しやすくしようとするのは当然。
結局は、管理者の裁量によって洗脳度合いが変化してしまうから、ブラック企業はなくならない。
大切なのは、複数の視点から総合的に判断すること。
例えば、「第三者認証を取ってる会社はホワイトだ」と考える人が多い。
しかし、残念ながら認証は結構簡単に取れる。
全国約1万4,000法人が取得している「健康経営優良法人」の認定基準はこんな感じ。
ブラック企業の典型的な「長時間労働」への対策は、マスト項目になっていない。
感染症予防対策や保健指導など、ハードルの低い”逃げ”項目とセットになっている。
認証制度も、いわばビジネス。
認定企業からの申請料によって、制度が成り立っている。
たくさんの企業が申請してくれれば、制度を運営する組織が儲かる。
もし、管理職を含める従業員の労働時間で基準を設けたら、ほとんどの企業が認証を受けられるし、審査しようと思う企業も減ってしまう。
企業がアピールしているポイントを、ビジネス的な視点を持って判断する。
「●●だから安心」という安易な考えでは、ネット記事のようなタイトル詐欺に遭ってしまう。
ブラック企業はなくならない
会社が、利益を追求する集団。
「安く長く働いてもらいたい」という経営陣のニーズは変わらない。
と同時に、「高く短く働きたい」という従業員のニーズも変わらない。
いまは、どの業界も人手不足で従業員ニーズが優勢なので、「ブラック企業」は注目されている。
だが今後、外国人の受け入れが流動的になると、需給のバランスが逆転する可能性もある。
となると、お互いが目利きの技術を上げるしかない。
経営陣が優秀な人材を安く確保しようと努力するように、就活者もより良い会社を見極める目を養う努力が必要。
そのために、「会社は、従業員のためだけにあるものではない。」という視点が必要だと思う。